カーボンニュートラルが、いかに難しい目標か!今の経済は石油・石炭・天然ガスなどの化石燃料を利用することで成り立っています。この利用を禁止することになるので、経済の悪影響は極めて大きいものとなります。経済への影響の中で特に懸念されるのが”エネルギー価格の上昇”です。この点に絞って説明致します。まず先程のCN(カーボンニュートラル)達成のシナリオの中の2番目「電気を化石燃料でなく再生可能エネルギーでつくる」から説明致します。この事はCN実現のためには避けては通れない1丁目1番地です。なぜならCO2排出量の85%がエネルギー起源のCO2でその中で約4割が電力から出るCO2なので、CO2を出さないエネルギーで電気をつくる必要があります。そうするためには原油や天然ガスの採掘や投資を徐々に削減することになります(投資撤退)。すると一足飛びに再生可能エネルギーにシフトできないので、化石燃料が供給減となりシフトするまでの期間で需要と供給のバランスが崩れ、エネルギー価格が上昇するのです。それを十分認識している産油国等もシフトまでが儲けるチャンスとばかりに増産を制限しています。足元(2021年10月現在)の原油価格が上昇しているのはコロナ禍からの需要回復だけではないのです。また近年再生可能エネルギーへのシフト段階で別の要因でエネルギー価格が上がることが露呈しました。特に天然ガスの状況は深刻です。ヨーロッパ、特にイギリスやスペインでは再生可能エネルギーの電源に占める割合が45%と日本の22%を大きく上回っていますが、昨今欧州に吹く風が弱まったために、電源構成比の役割を占める風力発電の発電量が20%減りました。その減少分を天然ガスで補おうとして天然ガスの価格が急騰してるのです。またアジアでは中国がカーボンゼロへのつなぎ役として、石炭火力からCO2排出量が相対的に低い液化天然ガス(LNG)にシフトさせて爆買いしており、日本・韓国と共に三つ巴のLNG争奪戦となっています。このような世界情勢を見ると脱炭素時代の主役は「天然ガス」と液化して運搬に便利な「液化天然ガス」なのです。その天然ガスの価格急騰によって、相対的に安い原油や石炭も買われこちらの価格も上昇するというサイクルに陥っているのです。化石燃料はそれ自体の価格上昇もさることながら、民生用でCO2削減が進まない場合、CO2の排出量によって課金する『炭素税』の導入も検討される可能性があります。そうなると暖房に多くのエネルギーを使う寒冷地で更に重い負担を強いることになります。ここまでの説明は電気を再生可能エネルギーでつくると化石燃料の価格が上昇するという話でしたが、次はその電気料金自体が上がるという説明を致します。